胸やけとは胸の前面あたりがヒリヒリ・ジリジリしたり、ただれたような感じや痛み、違和感を感じる症状です。食べ物は、口でもぐもぐと小さくされた後、食道という通路を通って、胃に入ります。食べ物は吸収しやすいように、胃酸など消化液でドロドロにしていきます。食道と胃の境目は、これらが逆流しないように飲食時以外は閉じられています。その境目で逆流を防止してくれている筋肉(下部食道括約筋)がゆるむと、胃酸(または胃の内容物)が逆流して、胸焼けが起きるとされています。 では原因をみてみましょう。
ケース① 圧力がかかっている
ゲップをするとき、空気が通る際には境目がゆるみますので、空気だけでなく胃酸の逆流します。なので、胃が張っているような状態は逆流が起きやすいと言えます。前屈みになる姿勢や、肥満体型、妊娠されている方は腹圧がかかるため、物理的に逆流しやすくなります。
ケース② 筋肉が弱い
年齢による衰えでも筋肉は弱りますし、赤ちゃんは境目の筋肉が未発達なので、嘔吐しやすいです。またこの筋肉は、腕や足の骨格筋などと違い、頑張って鍛えられるものではありません。過度なダイエットなどを繰り返している方では、内蔵など含めた鍛えられない筋肉が細くなっていることも多く、境目の筋肉の衰えから、胸焼けが起きることもあります。
ケース③ 生活習慣
食べ物や嗜好品など、生活習慣の面からは、タバコ・アルコール・コーヒー・紅茶・チョコレート・カレー・炭酸飲料水(ガス入りのミネラルウォーター)が代表的です。ケースの②や④とも関連しています。
ケース④ 胃酸過多
胃酸が多すぎるような場合も、それだけ逆流するものが多いことから、胸焼けを起こすことがあります。胃腸の動きが悪く、いつまでも胃のなかに食べ物が残っていると、胃酸が出続けることも要因となります。一方、ピロリ菌という胃に住み着く微生物は、萎縮性胃炎という病気を引き起こしますが、胃がんや胃潰瘍の原因となることが分かっているため、除菌することが多いものの、除菌した後に胃が元気になって、かえって胸焼けの症状が出てしまう方もいます。
ケース⑤ その他
もともと食道裂孔ヘルニアといって、境目が上にせり上がってしまっている体質の方は、逆流を防止する機能が働いていないことがあります。
このようにさまざまな要因があるものの、胃酸とその逆流に要因が大半ですから、胃酸をへらしつつ、生活習慣を改善することが重要と言えます。胃酸を減らすお薬はおもにPPIと、H2ブロッカーと言われるものです。PPIの代表的なお薬は、ネキシウム・タケプロン・パリエットなどで、H2ブロッカーの代表的なものはガスターです。どちらも有用なお薬ですが、ネキシウムは効果が十分出てくるまで、1日半から2日くらいかかる印象です。一方、ガスターは服薬回数や容量を調整すると効果が早いです。また夜間に逆流が起きて、朝に胸焼けがひどい方にはガスターを使用しています(ノクターナルディスペプシア)。
なお、検査については、あくまでも私個人の意見ですが、胸焼けだけで直ちに胃カメラをする必要はないのかなとおもっています。理由は2つあって、ガイドラインにも記載があるのですが、一つ目は、食道粘膜の障害の重症度と、胸焼けのつらさが必ずしも関係していない点です。胃カメラでものすごく粘膜が赤くただれていて、痛そうに見える方でも症状が軽いこともありますし、逆に内視鏡陰性GERDというのですが、胃カメラでなんともない方で、胸焼けがある方もいます(特殊な検査で逆流があることが判明している)。二つ目は、まずは治療してみて効果を判断してからでもいいと考えるからです。胃カメラは、確かに以前よりも細くなり、麻酔なども登場し、苦しくなく検査できるようにはなりましたが、誰にでもまず検査しましょうというには金額的にも時間的にもまだまだハードルは高いかなと思っています。胃カメラを早めに受けるべき方は、年齢や他の症状、場合によっては採血データや胸焼けの続いている期間などを勘案して決めていくと良いでしょう。
いろいろと書いているとまとまりもつかないほどですので、今回はこの辺りで。