新宿内科院長の絹川千尋です。
また新型コロナウイルスの変異株が発見されましたね。
対策は引き続き、ワクチン、手洗い、人込みを避ける、といった感染症予防になります。冬は空気が乾燥していて感染がしやすい時期ですので、より気を付けるようにしましょう。
さて、今回は発熱の原因となる感染症のうち百日咳についてお話します。
名前の通り、咳が特徴的な感染症になります。
私たち日本人は子供のころの定期接種に百日咳のワクチンが含まれていますが(3種混合ワクチンまたは4種混合ワクチンに含まれています。)、その効果は一生続くものではありません。10~12年くらいで効果が完全に消滅してしまうといわれています。そのため成人となってからかかる人も少なくありません。
【原因菌】百日咳菌
【症状】しつこい咳
熱や倦怠感などの症状はあまり強くありません。2週間以上続くしつこい咳が主症状です。子供の場合は重症化するのでワクチンを接種しますが、大人になると呼吸困難になるほどの咳はあまりみられません。ただ、咳の程度には個人差があり、症状の強い人では激しい咳で嘔吐してしまったり、長期間咳をし続けたためにろっ骨を骨折をしてしまう人もいたりします。
また、咳をするので人にうつしやすく、感染力は麻疹と同程度と言われています。ワクチンを接種していない小児が周りにいる場合には気を付けましょう。感染してから1~3週間くらいは人に移してしまうといわれていますので、長期にわたって気を付ける必要があります。
【診断】
咽頭ぬぐい液による遺伝子検査が主になります。罹患後4週間すれば血清の交代価測定が可能になりますが、その頃には症状も収まっているのであまり検査の意義がありません。
【治療】
マクロライド系抗生物質などの抗菌薬を用います。カタル期と呼ばれる早期の段階で治療を開始することで症状の遷延化や重症化を防ぐといわれています。それ以降では効果は劣りますが、周囲への感染防止のために内服をします。症状に対して鎮咳薬を使用すると少し症状が楽になります。また、咳による飛沫で周囲に感染させてしまうため、感染防止としても鎮咳薬を使用することは効果的です。
当院では診断用の検査キットはおいておりませんが、症状を聞いて臨床的に百日咳と診断して処方することがあります。
また、百日咳でなくともつらい咳はQOLを低下しますので咳止めを処方しますので、つらい症状でお困りの際はお気軽にご相談ください。
*ただし、最近咳止めが全国的に流通していない状況です。処方をしても薬局によっては在庫がない場合がありますのでご了承ください。
新宿内科 院長 絹川 千尋
公益財団法人日本産業衛生学会 指導医
一般社団法人 社会医学系専門医協会 指導医
日本抗加齢医学会 評議員
産業保健法法務主任者
産業医科大学 産業生体科学研究所 産業保健経営学 非常勤講師